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平成19年度知床羅臼岳清掃登山実施報告
                                             自然保護委員長 菅原修三
                                             記録担当 笈田孝俊
期日 平成19年8月3日(金)〜5日(日)
場所 羅臼岳周辺
民宿 「知床荘」
参加者49名(スタッフ7名小野倫夫・遠山和雄・広岡賢治笈田孝俊・菅原慶子・土屋勲・菅原修三)

日程

第一日(3日)受付・開会式。講演
 小野副会長より「実践を通して世界遺産保護に貢献して欲しい。」と の挨拶。また、遠山斜里山岳会
 会長から「昨年来日した世界遺産委員会の役員から、現地の保護状態には高い評価を得ているので、
 成功を収めてもらいたい。」との激励の挨拶。
 続いて、知床財団事務局長、山中正実の「知床における熊の生態について」は映像を見ながらの講演。
 「新世代ベアーズ」の生態と行勤を基本にして、一般の熊が取る様々な行動の意味を説明した。熊に遭
 遇しないためにはまず第一に考えておくべき事の具体例を提示した。また仮に遭遇した場合、事故の回
 避策として熊がその時どのような行動をとったのか、その行動毎に開設してくれたのは大変興味深いば
 かりでなく示唆に富むものであった。アメリカの国立公園でとられている回避事例の紹介もあり、氏の
 造詣の深さに参加者は感嘆していた。

第二日(4日)
 4:00「知床荘」出発
 未だ夜があけぬうちに起床。宿のご厚意で大鍋のみそ汁が振る舞われ各自朝食を取った後バスに乗って
 出発。曇り空であつたが途中水平線の向こうにオホーツクの朝焼けを見た時は、今回の清掃登山が成功
 裏に終わることを予感した。
 小野理事長が羅臼側コースの4人を送り届けた後に、木下小屋で本部詰めに入った。その他の三隊は木下
 小屋に集合し、各コース毎に登山を開始しながら清掃活動に入った。各コースの現場の状況は次のとおりで
 ある。

 【羅臼平〜羅白岳頂上周辺】29名
  羅臼平のハイマツ帯でティッシュペーパーを収拾。頂上付近の岩場ではカンや古いビンが岩の隙間に押し
  込んであった。また、カンやガラスの破片が土の中に埋めてあるのを収拾した。飴の包装紙やリングプル
  もあちこちに見られた。

 【ウトロ登山口〜羅臼平周辺】9名
  弥三吉水場は異臭は感じらなかったが、少し入った所にティッシュペーパーが散乱。当日組のクーラカンリ
  の話では、我々の後から登って行ったツアー(本州)の汚物の跡が見られ収拾したとのこと。こんな事が繰り
  返されているようだ。銀冷水では残念ながら汚物の跡が有り収拾。羅臼平のキャンプ指定地は一見ゴミが
  散乱していないかのようであったが、一旦ハイマツに入るとかなり古いカンやビンが残っていた。レリーフの
  大岩では悪臭があり、近くのハイマツ帯はキジ場になっていて汚物を収拾。ゴミ袋がハイマツの根元に押し
  込まれていたり、地面に埋められていたのを収拾した。

 【羅臼平〜三ツ峰キャンプ指定地】6名
  草原の水場は清潔が保たれていたが、草むらにに入ると埋められていたビンが一部露出しているのを発見。
  掘り起こすと二次破壊を起こす恐れがあるので収捨は断念。ここでもティッシュペーパーを発見し収拾。

 【羅臼側登山コース】4名
  コース全般にわたり良く整備されていたが、泊場の地点が一番ゴミがあった。相当古いと思われる4合ビンや
  カン類を収拾した。薬の小袋も目についた。羅臼平分岐の登出路や草むらには多量のティッシュペーパーが
  散乱していた。

 各コースで収拾したゴミは小袋で15個にもなり、一旦羅臼平に集積した後に稲西高校OBOG会の者が背負子
 で木下小屋に降ろした。
 13:30 木下小屋に再集結した後記念撮影。ゴミを斜里町に引き渡す。
 14:00 知床荘着 入浴・休憩
 17:30 閉会式 夕食・懇親会

第三日(5日)8:00解散


遠山斜里山岳会会長

山中知床財団事務局長

講演

知床峠から国後方面

羅臼側コース班

羅臼山岳会とレンジャー、森林監視員

左は佐々木羅臼山岳会会長



泊場





悠々と草を食む鹿たち

木下小屋でゴミと記念写真


総 括 (菅原)
 地元斜里山岳会、羅臼山岳会或いはガイドが日頃から登山路やキャンプ地の清掃に力を入れてきたことにより、
以前と比較して世界遺産の名に恥じないほど環境が整っていると感じた。
 しかし、年間一万人もの人が、「知床」を訪れることからして、登山路やその周辺にはティッシュペーパーや菓子袋、
空き缶が散らばっている状況は後を絶たない。
 更に問題なのは、今日ほど自然保護が叫ばれていなかった時代の遺物が風雨の浸食により露出していることで
ある。それらを除去するためには、ハイマツ帯に敢えて足を踏み入れなければならず、また掘り起こさなければなら
ないが、この作業を行うとなると周辺の植生破壊にもつながることになりかねない。両刃の剣である。大がかりな人海
戦術をとるとその影響は一層大きなものとなるであろう。
 この困難をどう克服し解決していくかが今後の課題である。時間をかけた地道な活動をしてゆくより他に手だては無
いのだろう。
 一年間にわたる準備で、斜里山岳会会長の遠山和雄氏には関係諸機関との折衝にご尽力を戴き、ご助言をお寄
せ下さったことに深く感謝申し上げます。
 また元稲西高校ワンダーフォーゲル部員の協力に敬意を表したい。若い岳人に自然保護の大切さが継承されている
ことは心強い限りである。
 尚、当日環境省ウトロ事務所から小長井崇大氏が参加して戴いたことを報告しておきます。有難うございました。

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