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  国体を振り返って

 第69回国民体育大会は平成26年10月17日から19日の日程で長崎県大村市で開催された。今国体の北海道山岳チームは次のメンバーで構成された。

 成年男子は、2004年埼玉国体より8年連続選手として国体に出場し、ここ2年間は監督として参加していた國谷斗馬選手と、2007年秋田国体より今回で連続8回目の出場となる杉本怜選手のコンビである。杉本選手は2013ボルダリングワールドカップミュンヘン大会で優勝し、他にも数々の国際大会で活躍している日本を代表する選手である。今回と同じ國谷・杉本のコンビで2011年山口国体ではボルダリングで優勝している。

 成年女子は、國谷選手と同じく2004年埼玉国体より今回で連続11回目の国体出場、しかもその全てで入賞している萩原亜咲選手と、2010年千葉国体以来コンビを組んで5年目になる一安瑛子選手のチームである。両選手は2010〜11年、ボルダリングで全国初の連続優勝を果たしている。

 少年男子は、遠軽高校3年の松浦凌選手と江別高校2年の武者知希選手のコンビ。2人とも国体初出場であるが、今年3月に行われたJMAユース日本選手権では松浦選手6位、武者選手10位、8月に行われたJOCジュニアオリンピックカップ大会でも武者選手9位、松浦選手14位という好成績を収めている。

 少年女子は、2011年山口国体から連続4回目の出場となる北海学園札幌高校3年の佐々木里穂選手と、初出場の遠軽中学校3年の菅原未紗選手である。
佐々木選手は、ワールドカップでも活躍した小武芽生選手と組んで昨年まで2年連続で入賞を果たしている。新星、菅原選手とのコンビでどこまで上位に迫れるかが楽しみな大会であった。

 今回の国体に向けて少年選手は昨年度より継続して強化を進めてきたし、9月には成年選手も合同で3泊4日の道外合宿を行った。成年選手の中には普段から少年選手を指導しているコーチも含まれており、日頃の強化練習や道外合宿を通してチームとしてのまとまり、団結力といったものも充分培われたと思う。近年、入賞記録を重ねてきた北海道山岳チームは、今年も一丸となって上位入賞を目指し長崎入りした。

 競技1日目。この日は、成年男女のボルダリング予選、少年女子のリード予選、少年男子のリード予選・決勝が行われた。

 成年男子のボルダリング予選では、杉本選手が、1/2級から2段に設定されたという課題を4課題とも一撃し、全選手の中で個人成績1位。ワールドカップ優勝者の貫禄を見せつけた。
國谷選手も2課題を完登し、予選はチーム2位で通過した。

 成年女子は、萩原選手が4課題中3課題を一撃、あと一課題も二撃で落として個人成績2位、一安選手も2課題を完登し、チーム順位は1位で予選を通過。2011年の山口国体のようなアベック優勝への期待がかかる。

 少年男子のリード予選では、5.13aとされるルートを松浦選手が完登(本人の登った感覚では5.12bくらいに感じたとのこと)、武者選手も38まで高度を上げた。
39ホールドを取りに行って落ちたので38+でないかと抗議を申し入れたが、このときハンガーに足が触れていたとのことで却下。北海道より高くまで登っていた他県チームも同様の反則が取られ、速報では8位だった北海道の順位が7位に繰り上がる。厳密なジャッジが吉に転じた。ともあれ予選を通過したので足使いについては慎重な注意を促す。決勝では一つでも順位を上げようと力を振り絞り、2人とも大きなミスはなく終わったが、結果は予選と同じ7位だった。全国
上位チームのレベルの高さを感じた。

 少年女子のリード予選は惜しくも10位と決勝には残れなかったが、初出場の菅原選手が、少年女子のエース佐々木選手にあと4手まで迫る健闘を見せた。

 競技2日目は、成年男女のリード予選と成年女子のボルダリング決勝、少年男女のボルダリング予選が行われた。

 成年男子リード予選では杉本選手が、5.13cで設定されたというルートを完登、ここでも圧倒的な強さを見せた。國谷選手も最上部に近い32+まで登り、チーム3位で決勝に進むことになる。

 成年女子リード予選では、萩原選手は惜しくも完登を逃したがtopに次ぐ38+まで到達。一安選手は24+でフォール、チーム9位になり、あとひとつというところで決勝進出を逃した。

 少年男子のボルダリング予選では、2人とも第1課題を一撃し、武者選手は第3課題も3回目のアテンプトで完登した。なお、第2課題では2人ともボーナスホールドを保持したかに見えたが、松浦選手のボーナスポイントがジャッジに認められず、本人に確認の上、監督より文書で抗議を申し入れた。これについては審判団のビデオ判定により、一転してボーナスホールド保持が認められた。保持かタッチかというあたりは微妙なところなので、審判員だけではなく、選手・監督も最
新の基準や事例をしっかり学んでおくことが必要だと感じた。チーム順位は8位となり、ぎりぎり予選を通過した。

 少年女子のボルダリング予選は2人とも1完登でチーム順位は11位。リードと同様、あと少しのところで決勝進出を逃した。しかし、昨年まで少年女子チームを牽引していた小武芽生選手が不在の中、2人ともよくここまで戦い抜いたと思う。特に菅原選手はまだ中学3年生である。まだまだ伸び盛りである。来年以降もぜひ活躍してもらいたいものだ。

 さて、この日のメインイベントは何をおいても予選を1位で通過した成年女子のボルダリングだろう。優勝への期待がかかる。北海道体育協会や競技力向上委員会の役員も視察、応援に駆けつけ、北海道新聞社の記者も取材に訪れた。予選1位のため競技順は最後、しかも当日の最終競技、まさに大トリである。期待が最高潮に達した空気の中で、選手たちにかかるプレッシャーも大きかったに違いない。第1課題は両者一撃、第2課題も萩原選手は一撃、しかし第3・第4課題は一撃ならず、4課題とも完登したものの萩原選手の個人成績は2位、一安選手も第3課題はボーナス2まで保持するもののあと少しのところでフォールし、チーム順位は3位となる。これはもちろんすばらしい成績である。しかし、過去2回優勝しているコンビで、予選では圧倒的な強さを見せた2人であるからこそ、どうしても惜しい気持ちが先に立ってしまう。この最強コンビには、ぜひ来年も出場してリベンジを果たしてもらいたいものである。

 競技最終日に残ったのは少年男子のボルダリング決勝と成年男子のリード・ボルダリング決勝である。この日最初の競技は

 少年男子のボルダリングである。少年男子決勝課題は1/2級から初段とのことで、道外合宿では二人ともこのグレードの課題はいくつも完登しているのだが、6分間という短い時間で2人それぞれ2課題を登るという練習をもう少しやっておくべきだった。ムーブを探っているうちに時間がきてしまい、決勝は2人とも完登数ゼロに終わってしまった。予選8位通過だったのでスタート順は最初である。選手と監督は1基のボルダーが終わるごとにコールゾーンに移動するが、会場から上がる歓声を聞くたび、悔しい気持ちがわいてくる。
武者選手はまだ来年は少年選手として出られるし、松浦選手も来年は成年選手として国体出場を目指し、この悔しさを晴らしてもらいたいものだ。とはいえ、二人とも国体初出場である。さらに、杉本選手が少年種別から卒業して以来、少年男子としては5年ぶりの表彰台に立ったわけで(しかも2種目とも)、素晴らしい成果である。
一昨年度より強化チームを組み、コーチ陣が継続的に指導してきたことが実を結んだものといえよう。

 成年男子のリード予選は5.13dという高難度のルートで行われた。完登者は出ず、杉本選手は1位と1手半差の個人成績2位、やはり強い。杉本選手は今年、左肩を怪我してしばらくブランクがあったというが、まったくそれを感じさせず、むしろ「新生」杉本の登場を感じさせる強さである。國谷選手も24+まで登り、予選より一つ順位を落としたといえ、チーム第4位。

 成年男子ボルダリングの決勝課題は1級から2段に設定されたとのことで各チームとも苦戦していた。7番目に登場した北海道も第1・第2課題は二人とも完登を逃し、第3課題を3回のアテンプトで杉本選手が落としたが、完登数はチームとしてこの1課題のみで第6位に終わった。

 3日間を通しての男女総合成績、天皇杯順位は第5位(第1位は千葉県)となり、昨年と同じ順位であるが、これで7年連続9回目の天皇杯入賞となり記録を更新した。
また、2003年静岡国体以来、12年連続で種目別賞状を持ち帰ったことになる。選手の努力の賜といえようが、これも強化コーチをはじめとする多くの方々のご指導と、山岳連盟の皆様、その他多くの方々のご支援があってこそ成し遂げられたものである。
 この場を借りて厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

                                     (文責)少年男子監督 山納 秀俊

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