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2009.9/30報告文追加しました



平成21年度清掃登山美瑛富士避難小屋の報告  (2009.9/30追加)
                                                自然保護委員長 菅原 修三
                                                記 録 担 当   笈田 孝俊

1、期 日  平成21年9月5日(土)〜6日(日)
2、場 所  美瑛富士避難小屋とその周辺
3、宿 泊  美瑛自然の家
4、参加者  42名

【はじめに】
 山はいつでも、どこでも「きれい」であって欲しいと日頃から願っているから、「清掃登山」と言うからには
汚れている山域に絞り込むのが一般的である。敢えてさほど汚れていない場所に「清掃」のために登る
こともあるまいという声も耳にする。この二律背反の命題を背負いながら「清掃登山」をすることをどう理解
してもらえたらよいのであろうか。決して活動したくないのではない。日常の山行時にもだれかれ言わず登
山路で目に付くゴミは無意識のうちに拾い上げている。
 菅原委員長は命題をかかえながら侯補地選定に毎年頭を悩ませて来た。そんな苦境の中、平成20年度
の道岳連総会の席上、美瑛山岳会の理事である内藤美佐雄氏より、美瑛富士避難小屋の無事完了の報告
があった。トイレは設置されず、相変わらず小屋周辺は汚染が著しいという話を聞き、次年度(平成21年度)
の清掃登山の実施場所を美瑛富士避難小屋周辺と内定し、その場で内藤氏に打診した結果、美瑛山岳会
としても日頃より清掃活動を実施しているが、なかなか処理が追いつかず苦労している、協力していただける
のであれば歓迎したいとの快諾があった。
 時期は、夏山シーズンも終わり雪が降る前の九月の初めが適切と考えた。

5、日程
【第一日】9月5日(土)曇り

・受付16:00〜17:00
 国道237号線、色とりどりの花で装飾された美馬牛峠を左折すると、ゆるやかな丘陵地帯に豊かな畑作が
営まれている光景を見ながら、道々美瑛・芦別線を6〜7分進むと、本日の宿泊場所である小ぎれいな「美瑛
自然の家」が右手に見える。今は廃校になった校舎を改装し宿泊施設になっているが、美瑛山岳会会長の
三浦陽一氏の母校であった所でもある。

・開会式17:10
 菅原委員長より「活動場所の検討をしていたが美瑛山岳会の内藤美佐雄氏より美瑛富士避難小屋周辺の
汚染がひどいという情報を寄せていただき、渡りに舟の感であった」と謝意を述べられ開会宣言をされた。続い
て小野道岳連理事長より「美瑛富士避難小屋は幌尻山荘同様に『トイレを考える会』もマークしている問題箇
所である。皆の力を結集して、少しでも清潔なキャンプ地にしてもらいたい。」と挨拶があり、美瑛山岳会への
惜しみない協カを参加者に要望した。
 更に美瑛山岳会会長の三浦陽一氏より「本日は全道各地よりお集まりいただきありがとうこざいました。トイ
レの問題は避けて通れないことであり、これを理解してかけつけていただきお礼を申し上げたい。」と協力体制
の必要性を述べられながら歓迎の挨拶があった。また翌日のトイレ(汚物)の収拾についての方法を内藤氏より
説明と解説があつた。要領としてビニール袋に手を入れたままつかみ、その状態でくるりと裏返してもう一方の
手で口を閉じる。愛犬の落とし物を拾う時のアレです。ビニール袋に穴があいていようものなら大惨事、固形化
していれぱ火ばさみで取る、など食事前にもかかわらず皆真剣そのもの。その後全員で「自然の家」で記念撮影。

・夕食兼懇親会18:OO
 美瑛山岳会七名のスタッフによる手料理が振る舞わられた。切り身がふんだんに入った石狩鍋、美瑛の丘の
恵みとしてのバタージャガ、トウモロコシ。そして握り飯。参加者は歓声を上げながら箸を進めるが、あまりにも
ボリュウムがありなかなか減らない。菅原委員長よりスタッフの三浦、中岡、内藤、小林夫妻、宮田、本村の各
氏が紹介される毎に大きな拍手で労をねぎらった。
午後8時20分には明朝の食事の準備があるため会食場所を去り、談話室で就寝時刻の10時まで談笑が続いた。

【第二日】
・起床・朝食4:30
 前日の夕食に引き続き、朝食も美瑛山岳会のスタッフの手を煩わした。味噌汁、握り飯、美瑛牛乳、野菜ジュ
ース、コーヒー。昨夜のバタージャガやトウモロコシにありついた幸運者もいた。

・宿舎出発5:30
 朝霧が深い。登山口まで35kmある。霧の中から見え隠れする美瑛の丘は幻想的である。墨絵にも水彩画に
もなるその色彩の変化はこの時期この時刻でなければ鑑賞できない。

・登山口出発7:00
 ストレッチの後、用具・装備を持って出発。一応人員確認のためにA・B・Cの3班に分け一列になって林道を進む。

・苔の小径(自称)7:40
 針葉樹林帯の中にわずか10数mしか連続していないが、背丈の低い草や緑の絨毯のような苔が登山路の両側
に敷き詰められている様は、京都の苔寺の趣である。滑りやすい木の根や岩が登山路の中に出現するにつけ一時
の安堵を覚える。

・天然庭園9:OO
 このルートでただ一ヶ所大きな岩が登山路を塞ぐ箇所で、夏山シーズンであればイソツツジの生け垣に縁取られ
た見事なロツクガーデンとなつたことであろう。この間にウサギギク、アキノキリンソウの鮮やかな黄色が目に染まる。
イワギキョウやクロウスゴも秋の訪れを感じさせ、小さな秋を口にする参加者もいた。

・第2涸沢10:30
 驚きの風景が展開。エゾツガザクラ、アオノツガザクラ、ウメバチソウ、イワヒゲ、エゾツツジが目に飛び込んで来た。
チングルマにいたっては一面の満開。間もなく大雪山に初雪の便りが届くというのに、今を夏の真っ盛りと言わんばか
りに咲き誇っている。遅くまで雪渓が残っていたのであろう。小雨のうっとうしさをしばし忘れさせてくれた花たちの思い
やりでした。

・避難小屋11:00
 地形によって随時変化する美瑛富士の天候を熟知している先導の内藤氏は、適切な地点で雨具の装着を適切に
指示してくれる。先日の遭難事故を教訓として生かしている。雨の中再建となったプレハブの小屋に到着。

・昼 食 11:OO〜11:20
・清掃活動11:20〜12:OO
 避難小屋で短時間の昼食を摂った後、即刻小雨の中で清掃活動を開始した。周辺のイネ科の植物やハイマツの下
を隈無く探す。片手にビニールの小袋、もう一方にはビニールの手袋やスコップ、火ばさみを使用する者もいる。うっか
りすると踏みつけてしまう恐怖におののきながらも、まるで宝探しでもするかのように縦横無尽に探し回る。
委員長は小屋の横1mしか離れていない場所で、不定形化したモノを見つけスコップですくい上げフン懣やるかたない。
収拾した小袋のモノを小屋の前で大きな袋に詰め替え、稲西高校ワンゲル部のOBに背負ってもらう。天気が良ければ
もう少し時間をかけて活動出来たが生憎の雨で切り上げた。
 戦利品はティッシュ56個、大モノ17個、総重量約5kgとなった。これを多いと見るか少ないと見るかは比較する時期
や場所によって分かれるであろう。仮に少ないと見た場合には次の四点が考えられるであろう。
@ 平成14年に「山のトイレを考える会」が清掃活動した時は汚染
 がひどかった。その後美瑛山岳会が少人数ながらも地道な清掃活
 動をしてきた結果。
A 近年の携帯トイレ携行の啓発活動によるマナーの向上の結果。
B 今夏の雨天による流失
C 今夏の悪天による登山者の減少
上記B・Cは一過性の原因であり、持続的な減少を目指すためには@とAの活動が必要となってくる。年間約400人
位の登山者がこの避難小屋を利用する現実がある以上、便所の施設がない限り汚物皆無の念願は達成されない。

下山開始12:OO
 雨で濡れた岩の多い登山路を慎重に下る。ガレ場では鋭い甲高いナキウサギが注意を喚起しているようだ。

登山口着15:30
 全員無事到着。クールダウンのストレッチ。収拾した汚物類は内藤氏がまとめて美瑛町の焼却施設に搬送して下さる。

閉会式・解散16:OO
 土屋道岳連副会長より「老いから若者まで協力して下さり、卯の花も一掃され小屋周辺はきれいになりました。高山
植物が一層引き立つようになり、山本来の姿になりました。」と労いの言葉をもらい、7時間半に及ぶ作業の疲れも
いやされ笑顔で解散となった。

6、今後の課題
 多額の費用をかけて、自然を保護するヨーロッパ諸国のように、国に根本的解決を求めることは無理なようである。
環境省に強く働きかけているボランティア団体は全国に数多くあるが、国の姿勢はかたくなである。将来的にヨーロ
ッパ並みの対策が、国の手によって実現されることを望みながら、今できることを実践する現実的な面で考えなけれ
ばならない。
 その一つは、最近普及活動が盛んな携帯トイレ持参の啓発運動である。登山者にこの意識が根付けば大きな力と
なるが、事はそう容易な話ではない。人の意識を変革させることほど困難なことはない。携帯トイレを配布したり販売
するだけが活動の目的ではない。目標は山から糞尿が無くなることであるが、一向に減少しない。
 もう一つは、山に残された糞尿を収拾、除去する腹立たしい作業である。これもすでにいずれの団体、山岳会も実
践中であるが、人海戦術にはあまりにも人手が足りない。糞尿の清掃登山を行うためには各団体や各山岳会と横の
連携を取ることが必要であろう。その際には、某かの財政的な助成が永続的活動に欠かせない要素と思われる。ボラ
ンティア精神にのみ依存するにはあまりにも問題が大き過ぎる。決して報酬ではない。ささやかな車代だけでかまわな
い。この財源を、各山岳団体が毎年自分の会から参加させる人数分の予算を計上しておくのも一つの策と思われるが
如何であろうか。
 このように啓発活動と現場(山)での労役活動という車の両輪で動くのが良いと思う。平成20年度道岳連総会で、
小野理事長は総括の中で「自然保護団体、ガイド協会、トイレ研との関係をどうするか。」と課題を提起している。快く
永続することが肝要である。

【むすび】
 今年も悪天侯に崇られ、また今夏の山岳事故で、一年前から準備して下さった美瑛山岳会には大きな精神的負担を
かけたことに心からお詫び申し上げます。お陰で無事故で所期の目的を達成出来たことは、偏に美瑛山岳会のご尽力
のたまものと感謝申し上げます。内藤美佐雄氏には、自然保護委員会や美瑛町との窓口となって受け入れ体制を整え
て下さったご努力に謝意を表します。また美瑛山岳会のスタッフの皆さんには、土・日の両日にわたり休日を返上して、
誠心誠意接待して下さったことに心よりお礼申し上げたい。
 更に、稲西高校ワンダーフォーゲル部OBが、2年前の羅臼岳清掃登山に引き続いて10名も参加して下さり、自然保
護の精神が根付いている感を受け意を強くしています。ご協力ありがとうございました。
 美瑛富士にはパッチワークの丘がよく似合う。地球が生きている限り、こんな山であり続けることを願ってやみません。
                                                                   (笈田記)
写真集

9/5
 美瑛山岳会で夕食準備

開会式

美瑛山岳会 三浦会長挨拶と内籐理事長の汚物取り方教室

記念写真

こぶし山岳会佐藤会長の乾杯で懇親会&夕食開始

美瑛山岳会スタッフ紹介

宴も終わり片付け
お疲れ様

9/6

登山口

沢はまだ春の花

雨の中美瑛富士小屋到着、昼食後作業開始

収穫物?を前に記念写真

下山開始

下山 収穫物を背負子から外す。それぞれの収穫を集計 合計で約5Kgでした

悪天候の中、皆さんお疲れ様でした

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